アキコ・フリーマンさんがウェビナーで語るカリフォルニアソノマでのワイン造り

2020年4月29日(水・祝)にカリフォルニアワイン協会主催が日本向け特別ウェビナー(オンラインセミナー)「Behind the Wines」を開催しました。カリフォルニア州ソノマ郡で女性ワイン醸造家として注目されているアキコ・フリーマン(Akiko Freeman)さんが日本語で自身のワイナリーについて詳しく話をしてくれました。約600名の方が参加されたことからも注目度が高いことがわかります。

アキコ・フリーマン(Akiko Freeman)さんがゲストの日本向け特別ウェビナー「Behind the Wines」

ホストはワインライターのイレイン・チューカン・ブラウンさんで、ゲストはフリーマン・ファミリー・ヴィンヤード&ワイナリーのアキコ・フリーマンさんでした。

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まず最初にフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリー(Freeman Vinyard & Winery) の創業の頃のことをイレインさんの質問に答える形でアキコさんが話をしてくれました。アキコさんは2001年にNorth CoastにあるSonoma Coast AVA(American Viticultural Area ソノマコーストアメリカブドウ栽培地域)内の山の中の土地50エーカーを購入して、ブドウ栽培を始めました。この地域は海と山に近く冷涼で良いブドウが取れるところですが、収量は内陸部に比べて少なく、1エーカーから2tしか取れないそうです。

海から15kmだと1エーカー(0.4ヘクタール)から2tのブドウが取れ、内陸は海から50キロで1エーカーから5tブドウが取れる。それだけ地域差があるにもかかわらず、全てSonoma Coast AVAと一括りにされている。でも、海近くのアキコさんを含めたWest Sonoma Coastで最初に栽培を始めた6社を含む25社のワイナリーでWest Sonoma Coast AVAを申請中で、もうすぐ許可が下りる予定とのこと。Sonoma Coast AVAの中にRussian River Valley AVAがあり、その中にGreen Valley of Russian River Valley  AVA があるというように重なり合っているが、今後は重なり合っている地域は申請できないとのことです。West Sonoma Coast AVAの許可が下りたら、アキコ・フリーマンさんのグロリア・ヴィンヤードがありWest Sonoma Coast AVAに気候的に似ているGreen Valley of Russian River Valley AVAも一緒のAVAになるように考えているそうです。



アキコ・フリーマン(Akiko Freeman)さんがワインを造るカリフォルニアはこんなところ

アメリカはワインの生産量が世界第4位で、その約90%がカリフォルニアで作られています。そして、カリフォルニアのワイン生産地はノースコースト、セントラルコースト、セントラルヴァレー、サウスコースト、シエラ・ネバダ山麓の5つのエリアがあります。

アメリカでのワイン造りはヨーロッパと比較すると新しく、18世期の後半にスペインの宣教師がカリフォルニアでブドウ栽培を始めて、ミサ用のワインを造ったのが最初だと言われています。19世紀中頃のゴールドラッシュにあわせて、カリフォルニアでブドウ栽培が拡大しました。しかし、19世紀後半のフィロキセラの被害と、1920年から13年間続いた禁酒法により、カリフォルニアのワイン生産は途絶えてしまいました。禁酒法が解かれた後、カリフォルニアワインの生産が復活しました。その後、科学的に研究された栽培法や醸造法によりワインの品質が向上しました。

AVA(American Viticultural Areas)とは?

1976年にはカリフォルニアのワイン法が制定され、1983年に改定されるのと同時にA V A.(American Viticultural Areas)の制度が設けられました。これにより、カリフォルニアワインは3つに分類されています。

①ジェネリックワイン・・・数種類のブドウをブレンドした日常的なワイン。

②ヴァラエタルワイン・・・ラベルにブドウの品種を表示したワイン。産地名表示、品種名表示、収穫年がそれぞれ下記の条件を満たした時にラベルに表示することができるそうです。

ラベルに州名を表示するには、州内で収穫されたブドウを75%(但し、カリフォルニアでは100%)、郡名を表示するには郡内で収穫されたブドウを75%以上使用、AVAを表示するには、AVAで収穫されたブドウの85%を使用、畑名(ヴィンヤード)は同一畑内で収穫されたブドウを95%以上使用した場合に表現できるそうです。また、新種名は表示されたブドウ品種を75%以上、収穫年はその年に収穫されたブドウを95%以上使用した場合に表示できるそうです。

AVAは政府公認のワイン指定栽培地域であり、全米に133箇所以上あります。

③プロプライアタリーワイン・・・ワイナリーがブドウ栽培から、醸造、瓶詰めまでを行ったワイン。オリジナルのブランド名や生産者めいが表示されている。

しかしフランスのワイン法のように製造方法についての規定はないそうです。



フリーマン ユーキ・エステート ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2016 (Freeman Yu-ki Estate Pinot Noir Sonoma Coast 2016)


Yuーki Vineyard(ユーキヴィンヤード)と呼ばれるブドウ畑はOccidental(オキシデンタル)という街の近くにありWest Sonoma Coast  AVAにあり、2007年にピノ・ノワールをメインに、シャルドネ を少し植えたそうです。そこは高い山の上にあり、海から7キロぐらいの風の強いところだけれども、Red Oak(赤樫)の森に囲まれているので、ブドウは安定して取れるとのことです。斜度は20度あり、今は労働条件の関係でそんな急な斜度のところにブドウは植えてはいけないそうですが、その法律ができる前だったのでその土地に植えることができたそうです。土も火山灰や砂、粘土などが複雑に混じり合っていて、それがブドウの味にも影響を与えています。そこからできるワインは凝縮感があり、海の塩や出汁昆布の旨味を感じるワインができるそうです。ですから、そのワインに合わせる料理は、お醤油味に合うと思うとアキコさんは言います。ピノ・ノワールにはサーモンが合うと言われていますが、アキコさんはよく「焼いたサーモンにお醤油をかけたもの」や「ねぎ味噌をサーモンの上にのせた料理」と一緒にこのワインを楽しんでいるようです。

イレインさんも解説の中で「Umami(旨味)」、「Dashi(出汁)」という言葉をそのまま使っていました。それだけ、「旨味(旨味)」や「Dashi(出汁)」という日本語は世界に通用する言葉になっているのでしょうね。アキコさんの話を聞いていると、日本料理にとても合いそうなワインですよね。

また、ここで栽培されたシャルドネ を使ってスパークリングワインを造る予定とのこと。アメリカでは、スパークリングは委託して造ってもらうことが普通だけれども、アキコさんは自分達で造っているとのこと。とりあえず瓶詰めが終わり、これから熟成にかかるとのことです。この新しい試みも楽しみですね。

フリーマン グロリア・エステート「輝」ピノ・ノワール ロシアン・リヴァー・ヴァレー 2016(Freeman Gloria Estate Kagayaki Pinot Noir Russian River Valley 2016)


グロリア・エステートはGreen Valley of Russian River Valley AVAにあり、海から15キロあり標高もユーキ・ヴィンヤードより低く、日照時間が長く、ユーキ・ヴィンヤードより霧の影響を受けることが少ないので、赤いフルーツの感じや果実味が豊かでオレンジ系の香りがするそうです。このワインはエレガントでありながら、力強いワインになるとのこと。余韻も長く、フィネスを感じるワインになっているようです。「ローストサーモンの黒オリーブタプナードのせ」にこのワインに合わせることが多いとアキコさんは言います。他にも魚介類にも合うとのこと。

サーモンには白ワインを合わせたくなりますが、エレガントで繊細な赤ワインなら、サーモンにも合うのかな。試してみたくなりますね。

フリーマン アキコズ・キュヴェ ピノ・ノワール ソノマコースト 2016 (Freeman Akiko’s Cuvee Pinot Noir Sonoma Coast 2016)


ユーキとグロリアの畑では、ピノ・ノワールをクローン別に植えている。それぞれ別々に醸造して別々のオーク樽で熟成させて、その年のエッセンスを表現しようとして、ベストな状態のワインをブレンドして造っているそうです、骨格はユーキからきて、旨味もしっかりした酸もあり、和牛ステーキ、ラム・チョップやチョコレートケーキにも合うそうです。

赤ワインにチョコレートが合うと聞きますが、ワインにもいろいろなタイプがあり、チョコレートにもいろいろなタイプがあるので、なかなか合う組み合わせが見つからないのですが、濃厚なタイプのチョコレートケーキに合うワインなのでしょうか。



リトライ ピヴォット・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2017 (Littorai Pivot Estate Pinot Noir  2017)

リトライ社はヴィオディナミ製法でピノ・ノワールを栽培していて、控えめだけどエレガントで10年熟成させているとファ〜と香りの美しいワインになるそうです。こんな美味しいワインができるんだとアキコさんが感動したワインだそうです。ここの畑は、グロリア・ヴィンヤードから車で5分くらいで、畑としては丘一つ離れているくらい。砂質のローム土壌になっていて、力強い長期熟成に向くワインになっているそうです。

ペイ エステート ピノ・ノワール スキャロップ・シェルフ 2014 (Peay Estate Pinot Noir Scallop Shelf  2014)


ペイ・ヴィンヤーズは、アジア人の女性ワイン醸造家で骨格の良いワインを造っています。スキャロップ・シェルフ・ヴィンヤードは北の方のアナポリスの近くに50エーカーぐらいの広さがあり、標高も高いので霧の影響を受けにくいそうです。女性的で明るい感じで凝縮感のある薔薇の花の香りがするワインとのこと。赤ワインでバラの花の香りのワインなんて、そそられますよね。

終わりに・・・

1時間強のウェビナーでしたが、こうやってワイナリーの方に直接ブドウ畑や気候、目指している方向などを聞くと、そのワイナリーにすごく親しみを感じるようになるし、そこで造られるワインにもとても興味を感じて、飲んでみたくなりますよね。イレインさんもアキコさんもとてもフレンドリーで楽しい時間でした。今は、コロナの影響で直接ワイナリーに行って話を聞くことは難しいけれど、いつかいろいろなワイナリーに行って直接話を聞いてみたいと思いました。それまでは、このようにオンラインで楽しみたいですね。